革でできているもの【身の回りにある革製品】
- 6 日前
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革製品と聞いて、多くの人はまず特別なものを思い浮かべる。高価な鞄、あるいはライダースジャケット。革は少し身構える素材だと感じている人は少なくない。
しかし実際には、ほとんどの人が毎日どこかで革に触れている。財布、ベルト、靴、鞄。意識していないだけで、革はすでに生活の中にある。
そして興味深いのは、それぞれの製品で革が選ばれている理由が違うという点だ。同じ素材が、まったく別の性質を期待されて使われている。
手が触れ続けるもの【財布、名刺入れ、キーケース】
財布は、一日のうちに何度も手に取られる。ポケットや鞄の中で他の物と擦れ、体温にさらされ、開閉を繰り返す。
この用途で革が選ばれる理由は、まず摩擦への強さにある。革は繊維が三次元的に絡み合った構造を持っており、表面が擦れても一気に破断しない。織物のように、糸が一本切れたところからほつれが広がっていくということが起きにくい。
もうひとつは、変化が汚れに見えにくいことだ。布の財布は使い込むと「くたびれた」印象になるが、革は色が濃くなり、艶が出る。同じ経年でも、劣化ではなく変化として受け取られやすい。
名刺入れやキーケースのように小さく薄い製品では、さらに別の性質が効く。革は薄く漉いても強度を保てるため、必要な部分だけを薄くして、かさばらない仕立てにできる。厚みを部分ごとに変えられる素材は、それほど多くない。
荷重がかかるもの【ベルト、鞄の持ち手、ストラップ】
ベルトは、細い一本で体を締め続ける。鞄の持ち手は、中身の重さを一点で支える。
こうした用途では、引っ張る力への強さが求められる。革は繊維方向による強度差が比較的小さく、細長く裁っても十分な強度を保てる。同じ幅の布と比べたとき、この差は大きい。
そして、伸びの性質も関係している。革は力がかかるとわずかに伸びるが、金属やプラスチックのように急に破断することは少ない。使い続けるうちに使用者の体や持ち方に合わせて馴染んでいく。ベルトの穴の周りが少し広がり、鞄の持ち手が手の形に沿ってくるのは、この性質によるものだ。
カメラストラップやギターストラップに革が使われ続けているのも、同じ理由である。重量を長時間支えながら、体に当たる部分が硬すぎない素材は限られている。
形を保つ必要があるもの【靴、鞄】
靴は、革の性質がもっとも複合的に使われている製品かもしれない。
歩行のたびに屈曲し、体重を支え、足の形に合わせて変形しながら、全体としての形は保たなければならない。この矛盾した要求に応えられる素材は多くない。
革は、水分を含ませると柔らかくなり、乾くとその形で硬化するという性質を持つ。靴の製造で木型に沿わせて成形するのは、この性質を利用している。履き込むうちに足に馴染むのも、汗や湿気による同じ現象だ。
鞄も同様である。自立する形を保ちながら、中身の量に応じてある程度形を変える。硬すぎれば物が入らず、柔らかすぎれば崩れる。革はその中間に位置している。
触れられるためのもの【手帳カバー、椅子、車の内装】
用途によっては、強度よりも触感が主な理由になる。
手帳カバーやブックカバーに革が使われるのは、耐久性のためだけではない。手に持ったときの感触、開いたときの音、時間とともに柔らかくなっていく変化。読むという行為に付随する体験の一部として選ばれている。
椅子や車の内装も同じだ。長時間肌が触れる場所で、革は温度になじみやすく、湿気を吸って放す。ビニールレザーが同じ見た目を再現できても、この点は置き換えにくい。
楽器のケースや、一部の楽器そのものに革が使われるのも、この系統に入る。
道具としての革【工具、作業用品】
日常からは少し離れるが、革が今も現役の道具として使われている領域がある。
たとえば、刃物を研ぐ最終工程で使われる革砥(かわと)。適度な弾力があり、刃の角度を過度に削らずに仕上げられる。同じ役割を果たす代替素材は、いまだに確立していない。
溶接や高温作業の手袋、鍛冶のエプロン。火花に対して溶けたり燃え広がったりしにくいため、化学繊維よりも革が選ばれる。
こうした用途では、見た目も高級感も関係ない。純粋に性能で選ばれている。革が装飾的な素材ではなく、実用の素材であることが、こういう場所に残っている。
用途ごとに、違う顔を持つ
こうして並べてみると、同じ「革」という言葉で呼ばれているものが、場面によってまったく違う性質を期待されていることが分かる。
擦れに強いから財布に使われ、引っ張りに強いからベルトに使われ、形を保てるから靴に使われ、触感がいいから手帳に使われ、燃えにくいから作業用に使われる。ひとつの素材がこれだけ違う理由で選ばれ続けている例は、それほど多くない。
そして実際には、用途に合わせて鞣し方や仕上げが変えられている。硬く仕立てる革と、柔らかく仕立てる革は、同じ素材の別の姿だ。革製品ごとの手触りの違いは、種類の違いというより、用途に合わせた調整の結果である場合が多い。
アクセサリーという例外
これだけ身の回りにありながら、革がほとんど使われてこなかった領域がある。指輪や腕輪といった、装身具の分野だ。
腕時計のベルトやブレスレットには古くから使われてきたが、指輪の素材として革を思い浮かべる人は少ないだろう。この領域では金属や石が圧倒的に主流で、革は珍しい部類に入る。
ただし、それは革が向いていないからというより、単に前例が少ないからだと考えている。指に触れ続け、体温で変化し、使うほど馴染むという性質は、むしろ日常的に身につけるものとの相性がいい。財布やベルトで起きていることが、そのまま起きるだけだ。
革は、特別な素材ではない。すでに毎日触れている素材である。そう考えると、指にはめる革が特別なものである理由も、それほどないように思える。
◆【関連する記録】
(用途ごとの性質の違いが、どの工程で生まれるのかについて)
(衣服としての革が、どのように意味を持つようになったか)
(装身具として身につけられてきたものの歴史)
StrangeArtifactでは、こうした歴史や意匠をもとに、革製品をひとつひとつ手作りしています。 商品はこちらからご覧いただけます。
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著者:ツダイサオ(Tsuda Isao) 革で架空の遺物を再現するレザーアクセサリーブランド「StrangeArtifact」主宰。衣装・空間・3Dと領域を横断して世界観をかたちにするデザイナーであり、一般社団法人 日本スチームパンク協会の理事も務める。h.NAOTOやSheglitとのコラボレーション、各種メディアへの衣装提供など実績多数。


