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五芒星・六芒星の意味【象徴の歴史】

  • 7月26日
  • 読了時間: 4分
黒い布の上に、羊の頭蓋骨や羽根、血の付いた手書きの紙、五芒星の線、石や指輪が並ぶ神秘的で不穏な祭壇風の場面。


二つの星、異なる力

星をかたどった図形は、洋の東西を問わず、古くから魔術や信仰の象徴として使われてきた。中でも代表的な二つが、五つの角を持つ「五芒星(ペンタグラム)」と、六つの角を持つ「六芒星(ヘキサグラム)」だ。


見た目は似ているが、その成り立ちも、込められてきた意味も、実はまったく異なる。この二つの図形が、それぞれどのような歴史を歩んできたのかを見ていく。



五芒星【ひと筆書きの守護】

五芒星は、5つの点を、互いに交差する等しい長さの線で結んだ図形だ。中心には正五角形が現れ、一筆書きで描けるのが特徴になっている。


その起源は非常に古く、確認されている最古の使用例は、紀元前3000年頃の古代メソポタミアにまで遡る。シュメール人はこの図形を「UB(ウブ)」と呼んでいた。古代バビロニアでは、五芒星の各頂点に木星・水星・火星・土星、そして金星の象徴である地母神イシュタルを対応させたとされる。惑星と図形を結びつけるこの発想は、後のヨーロッパの魔術思想にも受け継がれていった。


古代ギリシャでは、数を神聖視したピタゴラス教団が、五芒星を肉体と精神の調和を示す聖なる象徴として重んじた。線分の比率に黄金比が現れることから、単純ながらも美しい図形の代表格ともされている。


中世ヨーロッパでは、五芒星は主に悪霊への防御の印として扱われた。ゲーテの戯曲『ファウスト』でも、五芒星は悪魔を封じ込める図形として登場する。興味深いことに、遠く離れた日本でも、平安時代の陰陽師・安倍晴明が、五行の象徴として同じ五芒星の紋を用いていた。「晴明桔梗」の名で知られるこの紋は、今も晴明神社の神紋として残っている。ユーラシア大陸の東西で、まったく異なる文化が、同じ図形に同じような魔除けの力を見出していたのだ。


なお、五芒星を逆さにした図形(頂点が下を向く形)は、西洋では悪魔の角を思わせる形として、しばしば負のイメージと結びつけられてきた。同じ図形でも、向きが変わるだけで意味が反転するという点も、この象徴の面白さのひとつだ。



六芒星【二つの三角形の結合】

六芒星は、上向きと下向き、二つの正三角形を重ね合わせてできる図形だ。「ダビデの星」としてユダヤ教の象徴でもあり、現在のイスラエル国旗にも描かれている。


しかし、六芒星の歴史はユダヤ教よりもさらに古い。古代から様々な文化圏で使われてきた、普遍的な図形なのだ。「ソロモンの印章」として、中東の魔術的伝統の中で語られることもある。


六芒星の意味を読み解く鍵は、その構造にある。上向きの三角形は「火」を表す男性原理、下向きの三角形は「水」を表す女性原理とされ、この相反する二つが組み合わさることで、天と地、精神と物質、陰と陽の調和を象徴する図形として解釈されてきた。錬金術の伝統においても、六芒星は火・水・風・土という四大元素の統合を表す、重要な図形として扱われている。


19世紀の魔術結社ゴールデン・ドーンの文書には、六芒星が七惑星の作用を表す強力な象徴だと記されている。五芒星が「守り」の力を持つ図形として扱われたのに対し、六芒星は「調和」や「統合」を象徴する図形として、異なる役割を担ってきたのだ。



なぜ、これほど広く使われてきたのか

五芒星も六芒星も、古代バビロニア、古代エジプト、古代ギリシャ、ケルト文化、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など、驚くほど多様な文化圏で、それぞれ独自の意味を託されながら受け継がれてきた。


その理由のひとつは、これらの図形が持つ幾何学的な単純さと美しさにあるだろう。少ない線で、完結した一つの形を描ける。その完結性が、「守護」や「調和」といった、人間が古くから求め続けてきた概念の受け皿として、ちょうどよかったのかもしれない。



図形に込められた願い

五芒星は、悪しきものを退け、身を守るための盾として。六芒星は、相反するものを結びつけ、調和をもたらす印として。


形の違う二つの星は、それぞれ異なる願いを託されながら、何千年もの間、人々の傍らにあり続けてきた。象徴に意味を込め、それを掲げるという行為は、古代の護符から、現代の装身具まで、変わらず続いている。


◆【関連する記録】


(図形や記号に力を込めるという、同じ根を持つ古代の技術)


(六芒星が象徴する、四大元素の統合という錬金術の思想)


(五芒星の図像が、ロックの表現に取り入れられていった歴史)



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ストレンジアーティファクト主宰ツダイサオの近影写真、シルクハットをかぶりメガネをかけている。

著者:ツダイサオ(Tsuda Isao) 革で架空の遺物を再現するレザーアクセサリーブランド「StrangeArtifact」主宰。衣装・空間・3Dと領域を横断して世界観をかたちにするデザイナーであり、一般社団法人 日本スチームパンク協会の理事も務める。h.NAOTOやSheglitとのコラボレーション、各種メディアへの衣装提供など実績多数。





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