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オカルトとロック【魔術・象徴がなぜ音楽に宿ったか】

  • 2 日前
  • 読了時間: 4分

ろうそく4本が灯る月星模様の金属リング中央に、動物の頭蓋骨が置かれた暗く神秘的な儀式風の静物写真

なぜロックは闇を求めたのか

逆さ十字、ペンタグラム、悪魔の角を示すハンドサイン。ロックやヘヴィメタルのアートワークやステージには、古くから魔術的・オカルト的な象徴があふれている。


なぜ、音楽という表現の中に、こうした闇の図像が深く根を張ったのだろうか。これは単なる過激さを演出するための装飾だったのか、それとも、もっと根深い理由があったのか。1960年代から続く、ロックとオカルトの結びつきを辿っていく。



カウンターカルチャーの精神性

1960年代後半、ロックはオカルト思想と結びつき始める。この動きは、当時の社会が抱えていた不安や、既存の価値観への反発と深く結びついていた。


その象徴的存在が、ザ・ドアーズのジム・モリソンだ。彼は自らを「エレクトリック・シャーマン」と称し、神話や錬金術、オカルト的な象徴を歌詞に散りばめた。ステージ上のトランス状態を思わせるパフォーマンスは、古代の儀式を彷彿とさせるものだった。ロックスターであることと、カウンターカルチャー時代の精神的な導き手であることが、彼の中では同じことだったのだ。


この時代、オカルトをテーマにした映画も社会に大きな影響を与えていた。1968年の『ローズマリーの赤ちゃん』は、悪魔崇拝が日常に潜んでいるかもしれないという恐怖を描き、世界的な反響を呼んだ。音楽と映像、両方の領域で、オカルトへの関心が高まっていた時代だった。



オカルトロックの先駆者たち

ロックとオカルトの結合をより直接的に体現したのが、アメリカのバンド「Coven」と、イギリスのバンド「Black Widow」だ。


Covenは、サタニックなテーマ、黒ミサ、逆さ十字、そしてデビルホーンといった、後にヘヴィメタルが多用することになる図像のほとんどを、すでに1960年代の時点で確立していたとされる。Black Widowもまた、黒魔術のコンセプトを自らのバンド名やステージに取り入れた。商業的には大きな成功を収めなかったものの、これらのバンドが提示した図像と表現は、後続のバンドに大きな影響を残した。



ブラック・サバスという到達点

1970年、イギリス・バーミンガムで結成されたブラック・サバスが、セルフタイトルのデビューアルバムをリリースする。雷鳴と雨音、不気味な教会の鐘の音で幕を開け、不安定な響きを持つ「悪魔の三全音」と呼ばれるギターリフが鳴り響く。この一作が、ロックの歴史を決定的に変えた。


ブラック・サバスの歌詞には、悪魔やオカルト、戦争、人間の内面的な苦悩といったテーマが取り入れられ、それまでのロックバンドとは一線を画す重さと暗さを持っていた。彼らが鳴らす音楽は、ハードロックよりも激しく重いサウンドとして「ヘヴィメタル」と呼ばれるようになる。CovenやBlack Widowが切り拓いた先駆的な表現を、ブラック・サバスが完成させ、ヘヴィメタルという新しいジャンルそのものを作り上げたのだ。


以来、ブラック・サバスはヘヴィメタルの開祖として位置づけられ、その影響力はハードロックやヘヴィメタルだけでなく、ハードコア・パンクやグランジ、ブラックメタルやドゥームメタルといった、後の数多くのジャンルの源流として扱われている。



象徴が示していたもの

なぜ、こうした闇の図像がロックの表現として定着していったのだろうか。


逆さ十字やペンタグラム、悪魔の図像は、いずれも既存の宗教的権威や社会規範への、明確なアンチテーゼだった。教会が「正しい」とするものの対極を示すことで、ロックは自らの反抗の姿勢を、視覚的に最も強い形で表現していた。歌詞の内容そのものより、それを支える図像とサウンドの「気配」こそが、聴く者を惹きつける力を持っていたのだ。


これは、印章やシジルが特定の力を象徴する図形として用いられてきた歴史とも、どこか通じるものがある。記号や図像に意味を込め、それを掲げることで、ある精神性を表明する。古代の魔術書に描かれた象徴も、ロックのアルバムジャケットに描かれた象徴も、根底にある機能は近いのかもしれない。



音楽に宿った、もうひとつの儀式

魔術書が文字とシジルで力を呼び込もうとしたように、ロックは音とリフ、そして図像で、ある精神性を呼び起こそうとした。


形は違っても、そこにあるのは同じ衝動だ。見えない力を、何らかの形に込めるという、人類の古くからの営みだ。


◆【関連する記録】


(記号に力を込めるという、ロックの図像学と同じ根を持つ古代の技術)


(オカルトと同じ時代に、ロックの装いを形作った革の文化)



StrangeArtifactでは、こうした歴史や意匠をもとに、革製品をひとつひとつ手作りしています。 商品はこちらからご覧いただけます。




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ストレンジアーティファクト主宰ツダイサオの近影写真、シルクハットをかぶりメガネをかけている。

著者:ツダイサオ(Tsuda Isao) 革で架空の遺物を再現するレザーアクセサリーブランド「StrangeArtifact」主宰。衣装・空間・3Dと領域を横断して世界観をかたちにするデザイナーであり、一般社団法人 日本スチームパンク協会の理事も務める。h.NAOTOやSheglitとのコラボレーション、各種メディアへの衣装提供など実績多数。





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